【節税】期末賞与を利用した節税方法
先日、決算が1週間前に迫っている法人の社長からご相談を受けました。
「ウチの会社、どんぐらい利益出てるん?」
月次監査しており、ほぼほぼの着地点はわかりますので、
「1,000万円以上になる予定です。」と答えました。
そしたら、
「それ、従業員の期末賞与でなんとかできひん?今月中の支払は間に合わへんねんけど。」と聞かれましたので、
即答で「できます。」と返事した次第です。
しかしやり方次第では、従業員への還元と法人の節税のためにと思って支給した期末賞与が、費用にならないケースもあります。
そこで、今回は、期末賞与を利用した節税方法とその注意点を説明したいと思います。
*その他の節税方法はこちら法人版節税方法21選を参照
期末賞与とは
一般的に賞与とは、社内の取決めや従業員個人の成績に応じて、夏や冬に給料以外に支給するものをいいますが、期末賞与とは、企業の業績が好成績なため、従業員に還元する賞与のことをいいます。
決算賞与や臨時賞与とも呼ばれます。
従業員にとっては、臨時的なボーナスとなるので嬉しいことですが、経営者にとっては出費を伴いますのでキャッシュフローで見るとあまり良いことではありません。
では、何故冒頭のように業績が良かった企業から期末賞与を支給できるか問い合わせが来るのでしょう。
期末賞与を支給するメリット
節税が簡単かつ効果大
例えば、その年度の利益が1,000万円法人で確認します。
期末賞与を支給しなかった場合、法人税の実効税率が40%であれば法人税は400万円となります。
一方で期末賞与を500万円支給した場合、その年度の利益が500万円減り、法人税も半分の200万円となります。
このような事例で確認すると、期末賞与を支給する場合としない場合では納める税金に200万円もの差が生じます。
さらに中小企業であれば、通常23%ぐらいの法人税率が、所得800万円以下の部分については15%となりますので、その分納税額が少なくなります。
どうせ税金として持っていかれるぐらいなら、従業員に還元しようといった考え方です。
従業員のモチベーションアップ
期末賞与を支給したいと問い合わせが来る企業は、その年度の業績が好調なところです。
経営者にとっては、節税ありきの従業員への還元が目的でしょう。
従業員にとっては、日頃の頑張りの評価を賞与といった形でもらえるので、翌期へのモチベーションアップにつながります。
決算期の経費にできるための要件
期末賞与は、当期の業績によって支給額を決定することとなりますが、支給額の決定は期末ギリギリになることが多いと思います。
決算月ギリギリになりすぎて実際に支給する日が翌年度になってしまうこともあります。
その場合でも、期末賞与の未払いとして当期の費用として計上することができます。
未払賞与として計上するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- その支給額を、各人別に、かつ同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
- 1の通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
- その支給額につき1の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
国税庁HP参照
簡潔にまとめると、期末賞与を支給する人に支給する金額を伝えて1ヶ月以内に伝えた金額を支給すれば、当期の経費として計上することができます。
未払計上にする場合の注意点
未払計上するための要件は上述の通りですが、一つでも要件を満たしていなかったら期末賞与の全額が経費として認められません。
当期の経費として認められないケースは以下の通りです。
- 期末賞与を通知した人すべでに支給していなかった場合
例えば、決算月に賞与を支給する人に通知をしても、支給日までに退職した従業員に支給しなかったらアウトです。
- 通知した支給額と異なる金額を支給した場合
決算月に把握できる業績は早くて前月までの数字です。
最終的な業績は決算月の翌月以降でないとわかりません。
決算月に前月までの数字で支給額を決定したけど、いざふたを開けてみたら期末賞与の分大赤字になる可能性もあります。
しかし、赤字決算を嫌って期末賞与の額を通知した金額と異なる賞与を支給したらアウトです。
その他注意点
会社の資金は減る
期末賞与の支給で節税対策として納める税金を減らすことはできますが、当然ながら期末賞与の分の金額は会社の手元から減ってしまいます。
上記の例では、200万円の税金を減らすために500万円支出しなければいけません。
翌年以降も継続して支給するか
期末賞与の目的は節税と従業員への還元やモチベーションアップにあると思います。
毎年業績が良ければ期末賞与を支給しても会社の資金繰りには問題ないかと思いますが、業績が悪いときに支給しなかった場合、従業員のモチベーションが下る可能性があります。
そうならないためには、従業員に対して、事前に期末賞与を支給できる要件を提示しておいた方が良いでしょう。
役員には支給できない
役員報酬は原則定期同額で年間の支給額が決まっておりますので、役員に期末賞与を支給した場合、その支給分は役員報酬の損金不算入となり経費として認められません。
ですので、役員に期末賞与を支給してしまった場合、節税にならずお金が出ていっただけとなります。
例外的に役員賞与として認められる方法として、以下の方法があります。
- 税務署に事前確定届出を提出していること
- 役員ではあるが部長などといった使用人として兼務している場合(使用人兼務役員)の使用人部分に相当する金額
役員賞与は税務調査で指摘を受けやすいので、この点について注意が必要です。
期末賞与は、節税方法として比較的単純で節税効果が大きいですが、一つでも要件から外れるとその効果はゼロとなってしまいます。
また、一度支給してしまうと従業員のモチベーション維持に苦労する面があります。
もし期末賞与を支給することをご検討の場合は、税金のことだけでなく、上記の注意点も考慮した方が良いでしょう。
さらに期末賞与を支給するのであれば、期末賞与だけ現金支給でも問題ありませんので、できるだけ未払計上するのではなく、当期に支出した賞与として処理する方が得策です。
どの方法が有効かは個別的な判断が必要であり、税法は複雑で入念に検討する必要があります。
この記事に関心がある方は、お付き合いのある税理士に相談するか、
以下にてお気軽にお問い合わせください。
*この記事は投稿当時の法律に基づくものであり、独自の解釈がごさいますので、参考の際はご注意ください。
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