【改正】独立・法人化するなら今のうちに、インボイス制度と消費税

令和3年10月1日から「適格請求書発行事業者」の登録申請がスタートします。

申請があと1ヶ月と迫っており、先日所内でも内容の確認やクライアントへの対応について打ち合わせをしました。

軽減税率の判定に加え、この制度が動き始めた場合の煩雑さは税理士のみならず経理担当者にとって事務作業が増えます。

コロナ禍でまだ混乱している状況でこの制度を導入するのはどうなのかといった意見もあります。

また、この制度は消費税の納税義務者だけでなく、消費税を納めていなかった売上1,000万円未満の小規模事業者にも影響があり、小規模事業者への対応についても検討すべきといった意見もあります。

このように令和3年10月から申請が始まり、令和5年10月から「適格請求書等保存方式」(この記事では「インボイス制度」とします)が始まります。

この記事では、制度の概要から制度開始後の変化、対象者等について記載したいと思います。

*この制度は、令和5年10月1日から開始する制度であり、小規模事業者に及ぼす影響について現在検討中のようですので、今後内容が変わる可能性があります。

インボイス制度とは

一般的に、企業間の取引において売り手が買い手に請求書や領収書を発行しますが、インボス制度が導入されると、売り手は発行する請求書等に自身の登録番号を記載しなければいけません。

そのため企業は、自身の番号を登録して「適格請求書発行事業者」となることができます。

現行では、法人であれば法人番号をベースに、個人は任意の番号を申請することになっています。

この登録番号申請が令和3年10月1日からスタートし、制度導入の令和5年10月1日から登録事業者なるためには、原則令和5年3月31日が申請期限となります。

インボイス制度の導入による変化

では、インボイス制度の申請・導入がスタートすることによりどのような変化が起こるのでしょう。

制度上の変化

現行制度上、消費税は売上から預かった消費税から経費として支払った消費税を控除した金額を消費税として納めております。

例えば、5,000円の商品(消費税500円)の商品を1万円(消費税1,000円)で売った場合、

1,000円ー500円=500円の消費税を納めることになります。

インボイス制度が導入されると、発行事業者として登録している企業以外に対する支払い分の消費税は控除することができなくなります。

ですので消費税の納税額を考えると、買い手側は発行事業者以外との取引を見直すかもしれません。

また、登録事業者が発行する請求書等も今までのものから変わります。

① 簡易な適格請求書を発行できる事業者

消費者との取引と企業との取引が混在する飲食店や小売店のように、不特定多数の者に対して販売等を行う事業の取引については、原則的な「適格請求書」に代えて、「適格簡易請求書」を発行することができます。

② 適格請求書等の交付義務が免除される取引

以下の取引については、適格請求書の交付義務が免除されます。

  • 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送
  • 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売
  • 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
  • 自動販売機・自動サービス機により行われる商品の販売等
  • 郵便切手を対価とする郵便サービス

③ 請求書記載事項の変更点

従来の記載事項 適格請求書の記載事項 適格簡易請求書の記載事項
取引先の氏名又は名称 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日 取引年月日 取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨) 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨) 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
税率の異なるごとに区分した取引金額 税率の異なるごとに区分した取引金額及び適用税率 税率の異なるごとに区分した取引金額
       税率ごとに区分した消費税額等 税率ごちに区分した消費税額等又は適用税率
       書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称       

 

国税庁HP参照

消費税を納めていない事業者

原則、2年前の売上が1,000万円以上あればその年の消費税の納税義務が発生します。

既に消費税を納税している事業者(課税事業者)は、いつ適格請求書発行事業者の登録をしても大きく変わりませんが、毎年の売上が1,000万円以下の消費税納税義務がなかった事業者(免税事業者)は大きく変わります。

適格請求書発行事業者の登録を申請できる人は課税事業者に限られます。

したがって、免税事業者も課税事業者になって申請し、今まで消費税を納める義務がなかったのに消費税を納める義務が発生します。

免税事業者にとってあまり良い話ではないですよね。

また、今まで通り免税事業者のままでいると、前述の通り得意先は免税事業者や適格請求書発行事業者以外の取引に係る消費税を控除することができないので、以下の問題点が生じる可能性があります。

  • 消費税分の値引きを求められる
  • 取引先から除外される

ですので、現在免税事業者の方に対する影響は大きいです。

なぜ法人成りがラストチャンス?

その年の消費税の納税義務は2年前の売上高によって判定します。

消費税の課税事業者だった個人事業主から法人成りした場合、個人事業主のときの規模に関わらず法人としては設立1期目となるので、原則2年前の売上高はゼロになり法人として消費税を納める義務が無くなります。

ですので、法人設立後2年は消費税の免税事業者となり、消費税分の節税になります。

しかし、インボイス制度が導入されると前述のように免税事業者のままでは取引先に避けられる可能性があり、そのリスクを避けるため課税事業者にならざるを得ない状況になります。

この制度が導入されるのは令和5年10月1日からですので、2年間とまではいかないまでも、今からであれば法人成りすることで消費税の免税事業者になることができます。

令和5年以降は法人成りをすることによる消費税の節税スキームを使えなくなるので、まさに今がラストチャンスです。

ただし、単純に消費税の免税事業者になることのみで法人成りしてしまうのではなく、事業の収益力や継続性等、十分に検討・相談して法人成りするかしないかを決めましょう。

 

以上が、インボイス制度の概要となります。

個人的な感想として、この制度は未完成な部分が多いと思います。

税理士会でも制度の見直しを要望しているらしく、今後の動向に注意が必要です。

現時点では、制度の理解と自社に対する影響の度合いを知っておく程度にしておいて、登録申請は申請期限ギリギリの令和5年3月31日でも問題ないと思います。

法人成りについては、法人成りのメリットや収益力を総合的に判断して実現できそうであれば早急に法人成りしましょう。

どの方法が有効かは個別的な判断が必要であり、税法は複雑で入念に検討する必要があります。

この記事に関心がある方は、お付き合いのある税理士に相談するか、

以下にてお気軽にお問い合わせください。

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*この記事は投稿当時の法律に基づくものであり、独自の解釈がごさいますので、参考の際はご注意ください。